登場時からどうみても「猿」の外見をした獣の巨人。
しかし「猿」と呼んでいる人はほとんどいませんでした。唯一ユミルのみが
「あの猿は何だ?」
とライナー達に問いかけています。その話の中でエレンは
「何だ『さる』って?」
と反応しています。
何となく読み進めていると「エレンはその場にいなかったから猿の巨人を知らないんだな」という程度に解釈しがちです。
が、このシーンには世界のあり方を示す重要なヒントが含まれているのでした。
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壁の中には「猿」がいない
ここで示唆されているのは
「壁に囲まれた世界には猿という動物が存在しない」
という事実です。これは各キャラクターが獣の巨人についての会話の様子から見て取れます。
猿と「さる」の違い
46話でライナーがエレンとユミルを拉致しようとしているシーン。ユミルとライナーが
「あの猿は何だ?」
「猿?何のことだ」
と会話している中で「猿」は漢字表記されています。
それに対し、エレンのセリフは
「なんだ『さる』って?」
とひらがなで表記されています。
これは「その場にいなかったから話の内容がわからない」というよりも
エレンは「猿」という動物そのものを認識していないと解釈できます。
「進撃の巨人」では似たような伏線の見せ方にウトガルド城の「鰊の缶詰」のお話もあります。
「獣の巨人」という呼び方
獣の巨人を初めて発見したミケは「獣のような体毛で覆われている巨人」と表現しています。
そしてウトガルド城ではコニーが例の巨人を初めて「獣の巨人」と呼んでいるシーンがあります。
これ以降は「獣の巨人」という呼び方が一般化されるようになります。
どうみても「猿」のような姿の巨人に対して猿と呼んでいる人がいないのは不自然。つまり、壁の中の人々は猿を知らないことはほぼ確定と思われます。
ということは…猿という言葉を使っていたユミルとライナーはいったい何者なのか?
- 猿がいる世界から来た?
- 壁の中に猿がいないなら、外の世界?
- 人類は死滅していなかった?
- 壁の外には何か大きな勢力がある?
といった推測ができるようになりますね。
謎解きが好きな読者は想像力を膨らませることとなります。
マーレでも「獣の巨人」と呼ばれる
猿を知っている(はず)のマーレ人
冒頭のやり取りから、ライナー達やユミルの出身地であるマーレ国では猿という動物の知識はあると考えても良いでしょう。
ここで一つ疑問が残ります。
なぜマーレでも「獣の巨人」と呼ばれるのか、です。
猿を知っているマーレ人なら「猿の巨人」と呼んでもおかしくないはず。
というか、「
これはいったい…。
ご都合主義という名の優しさ
こう言っては身も蓋もない話ですが、後から登場したマーレ側でも同じ呼び方なのは
読者に対する優しさ
と考えて良いでしょう。
リアルさを追求するなら壁内とマーレでそれぞれの呼び方がある方が自然ですが、確実に読者は混乱しますよね。
だったら「ややこしいしもう一緒でいんじゃね?」となったのだと思います。
マーレでも獣の巨人と呼ばれる理由=読者への愛
こんな解釈でいいのだろうか…
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ポイント:伏線に気づかなくても問題なし
普通に読み進めている人の中には冒頭の「猿」と「さる」のニュアンスの違いに気づかないでスルーしてしまう人も多いでしょう。
この演出のすごいところは、謎かけに気づかなくてもストーリーの理解には全く支障が無い、というところです。
気づいた人はより深い楽しみを味わうことができますし、気づかなかった人も問題なく作品を楽しむことができますね。
謎が多く深いストーリーというのは読者を選ぶことが多いですが、進撃の巨人がここまで支持されるのは感覚系の読者と深読み系の読者のどちらもないがしろにしない抜群のバランス感覚によるものではないかと思います。
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