最初期のシンプルな「巨人vs人類」という世界観からうって変わって複雑な人間関係や国際情勢が絡んだストーリーとなってきた進撃の巨人。
漠然と読んでいても「結局誰が何をしたいんだ?誰と誰が仲間なんだ?」と混乱しがちですよね。
そこでこの記事では物語の主要なグループの目的などについてまとめていこうと思います。
すでにお星様となったタイバーさんの目的は別記事にて。
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兵団中枢部の目的
物語序盤からの主要組織であるパラディ島の兵団。初めは壁の外の巨人から人類を守ることが存在意義となっていましたが、物語が進むと島の巨人が全滅し海外の国々の脅威が明るみになります。
そこで新たな目的は「自分たちの新国家エルディアを他国から防衛すること」となりました。
そのためには外国の進んだ技術を導入して軍備を増強する必要がありますが…その前に世界各国はパラディ島の巨人の脅威に対して攻撃を仕掛けてくる気配が。
パラディ島の富国強兵を達成するまでに時間を稼ぎたい兵団は、「地鳴らし」の威力を背景に他国の攻撃を思いとどまらせようとします。
パラディ島の壁のなかに眠る数万の超大型巨人を呼び起こし、世界を踏み潰すというファイナルウェポン。
現実世界でいう核兵器的なポジション。
いざとなれば「地鳴らし」を発動できるとなれば各国も迂闊に攻撃できません。抑止力というやつですね。
しかし「地鳴らし」は始祖の巨人の力を使う必要があります。
外国を知った時点での方針
兵団では②の方法、つまり王家の血を引くヒストリアを巨人にして、始祖の巨人の継承者であるエレンを接触させる、という方法を検討します。
しかし、九つの巨人の継承者の寿命は継承してからわずか13年。
絶対にヒストリアを巨人にさせたくないエレンはこの計画に反対。なんとか別の方法を探りますが、ヒィズル国の援助も期待できず、時間が過ぎていきます。
そしてしだいにエレンが不穏な行動を見せ始めます。無断でマーレ国に潜入、奇襲をして世間の敵意をパラディ島に集めることとなり、兵団からの不信を買います。
エレン暴走後の方針
そこで兵団は②の方法に協力しないエレンを見限り、①の方法、つまりエレンを巨人化させたヒストリアに食わせる、という計画に舵を切ることになりました。
まとめると、
他国からの侵略を防ぐために「地鳴らし」を発動できる状態にしたい(実際に発動させるつもりはない)。そのためにヒストリアを巨人にしてエレンを食わせる。
というのが兵団の最終的な方針となりました。
ジークの目的
ジークの目的は始祖の力を使って「ユミルの民から子供が生まれないようにすること」。
王家の血を引くジークは腹違いの弟であるエレンが始祖を継承していると知り、エレンと理想を分かち合った上で始祖の力を発動して全てのユミルの民から生殖能力を無くしてしまおうと考えました。
マーレ国内で差別を受けながら育ったジークは、エルディア復権派のリーダーであった父グリシャから反マーレ思想を叩き込まれます。
しかし、ジークの心中はマーレを倒して再びエルディア人の天下を!ということにはありませんでした。
ジークは巨人兵器としてのユミルの民が存在し続ける限り、エルディア人の苦難は未来永劫続くと考えます。
そこで彼の出した結論はユミルの民に子供が生まれないようにして、いわばエルディア人の「安楽死」「緩やかな自殺」を達成しようとしたのです。
それがエルディア人たちを救う唯一の方法だと信じて。
イェレナはジークの巨人の力を見て以来の信望者であり、自らの意思で「安楽死計画」に賛同したというより「ジークの言うことだから正しい」という感覚で協力しているような節があります。
彼女は表向き「マーレ軍内の反マーレ勢力」としての義勇兵を結成、ジークの計画をひた隠しにしながら彼らを利用していきます。
義勇兵
イェレナによって結成された、マーレ軍内の反マーレ勢力。メンバーの出自はかつてマーレに滅ぼされた国の人々。
「ジークはマーレ軍内にいながらマーレを倒すために活動している」と信じてイェレナに協力していました。
義勇兵たちはマーレ軍を脱してパラディ島の軍備や技術向上に尽力。強くなったパラディ島とともにマーレを倒すために頑張っていたのですが…
パラディ島の兵団にはさんざん協力した挙句にマーレとの内通を疑われて拘束され、さらにイェレナにも騙されていたと知り踏んだり蹴ったり。
マーレ軍の目的
首脳陣による目的は、軍事大国の軍としては当然に「世界の覇権を握ること」ですが…
エレンによるレベリオ区襲撃により首脳陣はほぼ壊滅してしまいました。
その後、マガトが率いることとなったマーレ軍は世界連合艦隊の集結を待ってからパラディ島を総攻撃しようと考えるが、ライナーの提案によって少数の飛行船部隊を率いてパラディ島に奇襲をかけます。
この時点での攻撃の目的は、覇権というよりは防衛です。
以前の首脳陣の方針ではパラディ島の「始祖の巨人」の奪取を重視していましたがマガトはこれを一転、始祖を葬って世界から脅威を無くすことを優先します(マガトいわく「世界を救う」)。
しかし、エレンが真の目的を明かすにあたり、マーレ本国の壊滅と全世界の危機を確信。調査兵団と行動を共にする。
アズマビトの目的
キヨミ・アズマビトはヒィズル国の財閥の総帥にしてかつて国を治めていた将軍家の末裔。現実世界で言うと開国後の徳川家的な存在?
ミカサの母方の親族でもある。
アズマビトの目的は、一族の利益。パラディ島に投資することで島に眠る莫大な地下資源を得ようと画策します。
「地鳴らし」作戦を兵団に提案し、パラディ島の防衛に協力することで各国を牽制、アズマビト家でパラディ島の利権を掌握したいという意図が見えます。
話の最中にヨダレを垂らすほど儲け話に目がないキヨミですが、かといって金のためなら何でもする守銭奴と言うわけではありません。自分のことを
銭勘定に浅ましい女狐の汚名が轟く始末と成り果てました
諌山創『進撃の巨人』第111話「森の子ら」より
などと卑下していますが、例えパラディ島への投資が失敗しアズマビト家が破産しようともミカサのことだけは守る、と覚悟を口にしています。
実際、勝算の薄くなったミカサ達のことも見捨てることなく、体を張って協力を惜しみません。
あくまでビジネスに徹しながらも誇りや信念は失わない、商売人の鏡とも言うべき姿勢ですね。
ヒィズル国
100年以上前にエルディア帝国と同盟関係にあった東洋の国。どう見ても日本がモデル。
キヨミがミカサに「我々が失った一国の主の末裔」といっているあたり、100年前の敗戦によってヒィズル国は将軍が治める国から民主国家へと生まれ変わったのだろうと思われます。
しかし当初のパラディ島の資源獲得には前向きだったであろうヒィズル国は、キヨミの思惑とはちがいパラディ島の発展のために支援をしてやろうという気持ちはなさそうです。
同盟国とはいえ、パラディ島には世界から孤立していて欲しい(貿易の独占のため)というところですね。
エレン(イェーガー派)の目的
主人公ながらラスボスと化してしまったエレン。
彼の目的は、パラディ島以外の人類の絶滅…
いや、違います。絶滅はただの手段で、本当に望んでいることは「仲間を守る」ということ。
パラディ島のみんなを守るため、しかしヒストリアを巨人なんかにしたくない…
そしてエレンが出してしまった結論が、「地鳴らし」を実行して敵である人類を絶滅させることだったのです。
エレンははじめ兄のジークの「安楽死計画」に乗ったフリをして彼を利用します。「ジークと接触する」という、それまでの目的は同じだったからです。
ただジークと接触し始祖の力を利用する時、どのように力を使うかという選択権は始祖を持つエレンの側にありました。
その結果、エレンはジークの安楽死計画を拒否。始祖の巨人を発動させて「地鳴らし」を実行します。
エレンは進撃の巨人・最終形態に進化。ジークの肉体を取り込んで王家の血を利用、始祖の力を掌握し世界を踏み潰しに向かいました。
エレンの思いはただただ「仲間を守る」という主人公的なもの。
しかし、選んでしまったのは「世界の滅亡」というラスボス的なもの…
こんな皮肉な結論しか出せなかったのでしょうか?
イェーガー派
エレンはフロック、ヒストリアには計画を打ち明けていたようです。
そしてフロックは兵団の中で現体制に不満のある若手を中心とした「イェーガー派」とされる急進派の一派を形成してエレンに協力します。
エレン(の持つ地鳴らしの威力)を信望するイェーガー派は、エレンをヒストリアに食わせようとする兵団中枢部に対してクーデターを起こしパラディ島の実権を掌握します。
彼らのどれだけがエレンの思いを理解していたのかはわかりませんが…
彼らは「自分たちの故郷を守るために敵国を滅ぼすのは仕方ない」という思想です。
フランス革命時のジャコバン派をほうふつとさせますね。
調査兵団の目的
いわゆる主人公グループ。その主人公がラスボスになってしまったわけですが…
故郷のパラディ島は守りたいが、ヒストリアは犠牲にしたくない。他の国の人ともできるだけ争いたくない、といういたって普通?の思いのためにどう行動していいかわからなくなります。
別の方法を模索している間に各勢力の騒動に巻き込まれ、どうにも後手に回ってしまっている感じが否めませんでした。
しかしエレンの人類絶滅計画の発動に対し、苦悩しながらもエレンを止めることを決意。
世界を救うため、マーレ軍の残存メンバーとも合流してラスボス巨人となったエレンを追います
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まとめ:それぞれの目的
こうしてみるとそれぞれの集団でそれぞれの目的があるのがわかりますが、重要なことは「誰ひとり悪者はいない」ということです。
嫌な奴はいますが…フロックとか…
みんな、自分の大切なものを守るために戦っている、という点では共通しています。ただ、その結果にすれ違いが生まれてしまっているというか。
誰も他人を不幸にしてやろうとか、傷つけてやろうという動機で動いているわけではないのです。
「地獄への道は、善意で舗装されている」
って、誰がいっていたのかは忘れましたが、世の中の悲劇のほとんどはただのすれ違いから起きている、というのは現実世界でも全く同じだと言えるかもしれませんね。
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